膝蓋骨脱臼は、スポーツをしている人間にも起きやすい病気として有名です。膝蓋骨脱臼はワンちゃんにもかかる病気で、小型犬に起こりやすいと言われています。
柴犬も膝蓋骨脱臼を起こしやすい犬種の一種で、遺伝的にも後天的にもなり得る病気です。この記事では、柴犬に起き得る膝蓋骨脱臼の特徴と症状、原因、予防方法を解説しています。
柴犬の膝蓋骨脱臼は遺伝的に起こる確率が高いのですが、予防をしておくことで症状の発生や悪化を防ぐことに繋がります。
この記事を参考に、柴犬に起こりやすい膝蓋骨脱臼の対策をして頂けたら幸いです。
膝蓋骨脱臼とは
ここでは、膝蓋骨脱臼の特徴や種類について紹介しています。膝蓋骨脱臼には、部類すると2つの脱臼に分けられます。
小型犬がよく引き起こすものは内方脱臼ですが、外方脱臼を起こしやすい体質を持っていると若いうちから歩行が困難になる場合もあるのです。
膝蓋骨脱臼の概要
膝蓋骨脱臼とは、膝にある膝蓋骨というお皿が外側や内側に外れる疾患のことを言います。内側にお皿がずれる場合は内方脱臼と呼ばれ、外側に外れる場合は外方脱臼と呼ばれています。
メスよりもオスのワンちゃんに発症しやすく、発症率は1.5倍違うとされています。お皿が外れたとき、ワンちゃんや飼い主さんがワンちゃんの膝をまっすぐ伸ばしただけでも元に戻るときもあります。
しかし、何度も繰り返したり、お皿のズレがまっすぐでないと症状が悪化することにも繋がってしまうのです。
片足をひきずったり、内股や外股で歩き方に異変を感じたときは、獣医さんを訪れるようにしましょう。
軽度の症状では痛みを伴わない特徴も持っていますから、重症化してしまう前に何かしらの対策を取る必要があるのです。
内方脱臼
ワンちゃんが起こす膝蓋骨脱臼のうち70%~80%は、内方脱臼に当てはまります。内方脱臼は膝のお皿が内側にずれるため、脚がO脚になるような歩き方をします。
内方脱臼の原因は先天性と後天性に分けられ、それぞれ大腿骨滑車の発育異常や、フローリングで滑ってしまうなどが原因で起こります。
先天性の症状として、脚が外股に湾曲したり脱臼を起こしたりすることから、一時的に片脚で歩いたりします。
初期段階では痛みはありませんが、症状が悪化すると膝や脚の痛みが発生する場合もあるのです。
後天的に起きた脱臼の場合は、外からの力により発生をしてしまっているので、腫れや痛みを引き起こすことがあります。
外方脱臼
外方脱臼は大型犬に起こりやすい病気ですが、小型犬にもなり得る脱臼です。外方脱臼の場合は、膝のお皿が外側に外れ、脚がX字になるような歩き方をします。
幼犬期に発症することも多く、若いうちから歩くことが困難になってしまうため手術が必要となる場合もあるのです。
外方脱臼は膝のお皿が外側に外れることで、長指伸筋腱の付着部がこすれてしまいます。
付着部が断裂した場合には、膝の関節に関節炎を起こすことに繋がり、激しい痛みを起こしてしまうこともあるのです。そのため、外方脱臼のほうが内方脱臼よりも強い痛みを伴うケースが多くなります。
また、手術を行った後でも、再脱臼を起こす確率も外方脱臼の方が多いです。
合併症を起こす可能性はある?
膝蓋骨脱臼において、合併症を起こす確率は低いと言われています。しかし、症状が重度の場合や外方脱臼を起こしている場合には、合併症を起こす可能性もあります。
合併症として考えられるのは、膝下のふくらはぎ近くの脛骨稜がスムーズに移動をしないため再脱臼を起こすケースがあります。
また、治療時に細いピンで固定した脛骨稜に負担がかかることで、脛骨稜の骨折を起こしてしまう可能性もあるのです。
手術後生涯にかけて膝関節に含まれているピンですが、移動をしたり折れたりすることで、刺激を起こしてしあうこともあります。
感染などの合併症はほとんどないものの、手術をした膝関節近くに合併症をおこしてしまう場合があるのです。
膝蓋骨脱臼の見分け方
膝蓋骨脱臼を見分けるためには、ワンちゃんの歩き方や脚の状態を見ることが大切です。膝蓋骨脱臼を起こすワンちゃんは、片脚で歩こうとしたり、歩き方がぎこちない姿が見られます。
脚をあげる仕草を何回か繰り返している場合にも、膝蓋骨脱臼を起こしている可能性があります。
内方脱臼の場合は歩く脚がO脚になり、外方脱臼の場合は内股で歩く姿が見られます。
脚を引きずっている姿や脚の形が変形している姿が見られたら、膝蓋骨脱臼の可能性を疑うとよいでしょう。
膝蓋骨脱臼の症状
ここでは膝蓋骨脱臼の症状と行われる治療、完治までにかかる時間について紹介しています。膝蓋骨脱臼は、症状の重さにより4つに分けられます。
また症状のグレードが異なれば、行われる治療法も変化してきます。
それぞれの症状を知ることで、ワンちゃんにどのくらいの症状が起きているのか、それに対応する予防はどのようなものかを知ることにが可能になります。
動物病院でもグレードで説明されることもありますので、事前に把握をしておくと診察の際もスムーズに状況を判断することにも繋がるのです。
症状
膝蓋骨脱臼の症状は主に、無症状に近いもの・膝を曲げると脱臼するもの・ほとんど脱臼したままのもの・骨が変形しものに分けられます。
グレード1からグレード4まで具体的な症状を知ることで、ワンちゃんの脚の健康状態を把握しておきましょう。
グレード1
グレード1の状態とは、脱臼をしてもほとんど症状が現れない状態のことを言います。脱臼をしたとしても自然に元に戻るため、発症したことに気がつかない程です。
脱臼をした際に少し痛がったり、脚を伸ばそうとする姿が時たま見られることもあります。しかし、脱臼を起こす頻度も少なければ、症状にも現れづらいのがグレード1の状態です。
自然に脱臼をしなくなる場合もあります。
グレード2
グレード2の状態とは、歩行時の時たまに膝のお皿が外れたりと、グレード1の状態よりも脱臼を頻繁に起こす状態のことを言います。自然に外れたり戻ったりをしますが、痛みを伴う場合もあるのです。
動物病院で診察される最も多いケースがこのグレード2の状態で、足をあげたり、片足で歩いたりと飼い主さんでも異変を察知できる程度です。
関節表面にある軟骨がすり減ることで痛みを引き起こすこともあれば、膝のねじれから痛みを起こす場合もあります。
ジャンプしたり、階段を登ったり、寝転がったり、姿勢を変えるだけでも脱臼を起こしてしまうのがグレード2となります。
グレード3
グレード3の状態とは、ほとんど脱臼を起こしたままになっている状態のことを言います。
症状が目に見えるだけではなく、常に足を引きずったり歩行がしづらそうな状態のため、適切な治療が必要になる状態です。
グレード2までは自然に膝蓋骨が元に戻る事もありましたが、グレード3では指で膝蓋骨を戻したとしても、またすぐに外れてしまいます。
そのまま放置をしてしまうと症状が悪化し、歩行が困難になったりと日常生活に支障をきたしてしまう事もあるのです。
幼犬期にグレード3の状態が起きていると、骨の成長時に膝を悪くすることに繋がってしまいます。骨の変形も見られるため重症に近い症状です。
グレード4
グレード4は、膝蓋骨脱臼の中でも重症の状態です。指で膝蓋骨を戻そうとしても修復できなければ、骨の変形も重度になっています。
グレード4の状態では大体四頭筋も硬くなっているため、筋肉の伸縮ができず歩行困難を常に起こしてる状態です。
足を曲げたままの状態で、ゆっくりと歩く姿が見られます。重症であってもあまり支障がなく歩くことができるワンちゃんもいますが、反対に全く歩くことができないワンちゃんもいるのです。
グレードごとの治療
症状の重さによりグレードが異なる膝蓋骨脱臼ですから、ワンちゃんの症状に合った治療が必要です。
症状があまり現れていない場合には、自然治癒に頼るほうが良い場合もあります。症状によって適切な処置を取りましょう。
グレード1
グレード1の状態では、症状が見られない場合も多くあります。自然に脱臼を起こさなくなる場合もありますので、グレード1の状態では手術を行わず自然治癒として様子を見ることも方法の一つです。
しかし、痛みを伴ってきた場合にはワンちゃんを安静にさせたり、痛み止め服用も必要になる場合もあります。
幼犬期のワンちゃんの成長に関わることや、症状が悪化することが気になる場合には、動物病院にて診察をするようにしましょう。
グレード2
グレード2の状態では、自然治癒で膝蓋骨脱臼を直すにはかなり難しい状態です。
グレード1と同様に、痛みが伴うときには痛み止めを服用する必要がある場合もあれば、手術が必要になる場合もあります。
どのタイミングで手術を行うかはお医者さんによってこ異なりますが、症状を悪化させないためには早めの通院が重要です。
グレード3
グレード3の状態では、脱臼をしたままの状況が続いてしまっているため、獣医さんのもとで診察をするようにしましょう。
日常生活に支障をきたさないためには、早めの手術が必要になる場合もあります。グレード4まで症状が悪化してしまうと、足への負担を大きくしてしまう可能性が高いのです。
グレード4の状態になる前に、早めの対策を取るようにしましょう。また、グレード3の状態でも症状の出方によっては手術の必要有無は異なります。
獣医さんと相談の上で適切な処置を取るようにしましょう。
グレード4
グレード4の状態では明らかに、歩き方や骨の形に異常が出てる状態です。グレード2・3と共に、手術の必要有無は症状によります。
しかし、もし通院をしていない場合には、獣医さんの元でまず診察を行うようにしましょう。歩けない状態が続けば肥満体質になりやすかったり、ストレスもたまりやすくなります。
柴犬の体の健康を維持するためには、早めの対策が重要なのです。
治療法の違い
膝蓋骨脱臼の治療法には、内科治療と外科治療に分けられます。どちらの治療が必要となるかは、グレードごと・症状の現れ方によって異なります。
内科治療
膝蓋骨脱臼の内科治療とは、保存療法とも言われています。症状が軽い際や手術のリスクが高いときに、一時的に炎症を抑えることを目的として取られる治療法です。
内科治療には、痛みを和らげるお薬や半導体レーザー治療があります。根本的な原因に対する治療を行うわけではないので、膝蓋骨脱臼を完全に治せるわけではありません。
しかし、一時的な痛みを抑える効果や、症状が悪化せず良好な状態を保つことができる可能性があるのです。
また、食べ物や運動で体重管理をするなど、生活習慣を見直す処置を取らせることもあります。
外科治療
外科治療では、滑車溝造溝術・脛骨粗面転移術などの手術が行われます。治療法は大きく、骨組織の再建と軟部組織の再建に分けられます。
膝の溝を深くすることで、膝蓋骨が滑車溝と呼ばれる関節部から外れにくくさせたり、ピンを打つことで膝蓋骨と大腿四頭筋を固定させたりする方法があります。
グレードや症状、犬種、体重、年齢により行われる手術は異なりますが、骨の変形・痛みがある場合には外科治療での手術が必要です。
リハビリ
外科手術を行ったワンちゃんには、リハビリが行われることがほとんどです。リハビリには膝蓋骨脱臼を治す効果はないため、あくまで手術後に行われます。
ワンちゃんの性格によっても長い入院が可能かどうかは異なるので、ワンちゃんによってリハビリの方法や期間は異なります。
治療にかかる時間
内科治療の場合、薬を飲むことや体重を管理することなど、自宅での療養が主になります。
外科治療の場合は、手術をするのに約1週間ほどの入院が必要となります。手術後はたいて3~6ヶ月で定期的な通院も必要なくなります。
治療費
グレードや症状によって様々ですが、20~40万円ほどです。
膝蓋骨脱臼の予防法
遺伝により発症する可能性が高い膝蓋骨脱臼ですが、後天的に症状が現れるワンちゃんもいます。
予防をすることで、あなたの柴犬が将来的に膝蓋骨脱臼を起こす可能性を低くすることに繋がるのです。
また、予防をすることによって、遺伝的に膝蓋骨脱臼を起こす可能性が高い柴犬の症状を悪化させないことにも繋がります。
膝蓋骨脱臼の予防を行うことで、ワンちゃんの足腰を丈夫に保てるようサポートをしてみませんか?
膝蓋骨脱臼を起こさないための環境づくり
後天的に膝蓋骨脱臼を起こす特徴として、高いところから飛び降りたり、フローリングで脚を滑らしてしまうことで症状を発症させてしまうことがあります。
遺伝を持っていないわんちゃんでも膝蓋骨脱臼を起こしやすい柴犬ですから、家内での環境づくりへの配慮を行いましょう。
高い場所がある場合にはわんちゃんを登らせないような柵をしたり、部屋にあげる時は滑りずらい場所に入れるなどの対策が必要です。
適度な運動
運動量が多くてやんちゃな柴犬ですが、硬い地面などで激しい運動をさせてしまうことも膝蓋骨脱臼を起こす原因となります。
ストレス解消や肥満対策のために、適度な運動が必要です。
運動量を減らす必要も毎日の散歩を減らす必要もありませんが、激しい運動をするときは芝生や土の上で遊んであげるようにしましょう。
肥満対策
膝蓋骨脱臼を悪化させないためには、肥満対策が重要となります。
肥満になるほどの体重が増えてしまうと、脚の骨や関節への負担は増していきます。
肥満をおこなさいよう、食事量やカロリーの多い炭水化物を減らすなどの対策を行いましょう。
タンパク質の多いごはんと十分な運動で、筋肉をつけることも重要です。
柴犬の膝蓋骨脱臼を悪化させない対策を
柴犬に起きやすい膝蓋骨脱臼の特徴や予防法、いかがでしたでしょうか?遺伝的になりやすい膝蓋骨脱臼ですが、症状と予防法を知っておくことで症状の悪化を防ぐことに繋がります。
ワンちゃんの身体の健康を長く守るためには、足腰が良好な状態を保つことが大切です。
柴犬になりやすい膝蓋骨脱臼を知ることで、ワンちゃんの脚を守る対策を行ってみませんか?
この記事を参考に、あなたの柴犬の健康を維持する対策を行って頂けたら大変嬉しく思います。
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