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柴犬の多頭飼いは楽しそうだけど大変そう!
多頭飼いの様々なパターン
「柴犬を多頭飼いする」と一言に申しましても、様々なパターンがあります。
- 先住犬(1匹目)が柴犬で、2匹目も柴犬を飼いたい場合
- 先住犬(1匹目)が柴犬で、2匹目は他の犬種を飼いたい場合
- 先住犬(1匹目)が他の犬種で、2匹目に柴犬を飼いたい場合
- 2匹同時に柴犬を引き取る場合
などなど…。もしかしたら、猫と一緒に柴犬を飼いたいという人だっているかもしれません。YoutubeやInstagramなどで見かける、「柴×猫」の異種格闘技の動画はみていて癒されますし、ウチもそんな風な多頭飼いをしてみたいな…と憧れている人もいると思います。
多頭飼いのトラブルへの不安
一見、癒しと幸せに溢れていそうな多頭飼い、冷静に考えてみると大変なことも多そうです。相性が悪くてケンカばかりだったらどうしよう、片方がストレスを感じてしまったらどうしよう、などなど。
多頭飼いで起こりそうなトラブルは、考え出したらキリがありません。特に「相性」の部分は実際に飼ってみないと分からない部分も多く、2匹目以降に迎えるワンちゃんをどのように選べばいいのか、とても難しい問題です。
多頭飼いする犬種の組み合わせ、性別の組み合わせ、年齢差、柴と猫の組み合わせ、多頭飼いする順番、先住犬の性格など、多頭飼いを成功させる上では様々な要素を考えないといけません。しかし、無限に考えられうすべての個別の状況について事細かに解説するのは、残念ながら不可能です。
この記事では、「年齢差、性別」などの多頭飼いの多くの場合に共通する注意点や重要なポイントに絞って解説していきます。また、柴犬と他の犬種の相性、柴犬と猫の相性についてもできる限り触れていきます。
憧れと不安が入り混じる多頭飼い。この記事を通して、一人でも多くの「柴犬を多頭飼いしたい」と思っている人の背中を押すことができたら幸いです。
柴を多頭飼いするメリットとデメリット
メリット:社会性が身に付き、しつけの負担が減る
ペットを多頭飼いする何よりのメリットは「ワンちゃんは寂しくなくなり、家の中が賑やかになって飼い主もハッピー」ということが挙げられますが、それだけではありません。
初めて柴犬や他のワンちゃんを家に迎えたとき、トイレのトレーニングをしたり吠え癖や噛み癖を直したり、初めて経験するペットのしつけに苦労した人も多いはずです。2匹目を迎えるときは、1匹目の経験があるのでしつけを行う時にも心に余裕が生まれますよね。ちょうど、「上の子の受験を経験すると、下の子の受験のときは少し楽な心構えでいられる」みたいに。
実は、多頭飼いでしつけの負担が減る要因はそれだけではありません。犬の祖先は群れで生活しており、犬には群れで生きていくための社会的な本能が具わっています。人間が思っている以上に犬は賢いもので、後から家にやってきた犬は先輩犬の振る舞いをよく見て学ぼうとします。トイレする時、エサやおやつを食べるときなどの先輩犬のしつけがしっかりしれば、後輩犬はそれに倣おうとしてくれます。
「他人」ならぬ「他犬」が普段から一緒に暮らす環境で社会性が身に着けられれば、外で他の家のペットや人と触れ合う時も安心できます。
柴犬の多頭飼いならではの苦労
ペットを多頭飼いする上でのデメリットとして、費用面やケージを増設するためのスペース面も気になるところです。(室内で多頭飼いに必要な空間づくり、物件の間取りについてはの後で紹介します。)もし、違う性別で多頭飼いするなら、避妊や繁殖期に対する対策も必要となってきます。
特に、先輩犬が室内飼いの柴犬である場合のデメリットとなるのが、先輩柴のストレスです。
柴犬に特徴的な性格として、「強い独立心」「飼い主への忠誠心」「強い縄張り意識」が挙げられます。先輩柴が一匹だけだったころは、家のスペースも飼い主の愛情もひとり占めでき、他の犬のことを気にすることなく自由気ままに振舞うことができました。けれども後背犬が家にやって来ると、自分の縄張りだと認識していた場所に他犬が浸入してきますし、忠誠心を持って接していた飼い主から注がれる愛情が独り占めできなくなってしまいます。
柴犬を飼っているところに他のペットを迎える際には、後輩ペットが環境に適応するための配慮と同じくらい、先輩柴に対するケアと気配りが必要となってきます。
柴犬多頭飼いの注意点と、ケンカ対応の原則
適度なケンカやじゃれ合いは必要
柴犬に限らず、ペットの多頭飼いにつきものなのがペット同士のケンカ。動画で他の家の犬同士がけんかしているのを見る分にはほほえましく思いますが、いざ自分の家のワンちゃんとなると、ついつい止めに入りたくなります。
多頭飼いを長い目で考えるなら、犬同士のケンカも必要です。ケンカも犬同士のコミュニケーションの形の一つですし、ケンカしたりじゃれ合ったりすることはワンちゃん同士の社会生活には必要な行為です。ケンカの起こり始めや、大きなケガになる恐れのないケンカやじゃれ合いは、むやみに止めないことが大切です。
犬には犬同士の力関係があることを理解すること
犬には、犬にしかわからない力関係というものが存在します。
飼い主さんの中では「先輩犬が上、後輩犬が下」という認識があるかもしれませんが、ケンカなどを通して「後輩犬が上、先輩犬が下」という力関係になる可能性も十分考えられます。ちょうど、「気が強い後輩と、優しすぎる先輩」みたいな構図でしょうか。
皆さんも中学や高校時代に、友達同士で「あの女子グループさ、〇〇がリーダー的存在で、△△がリーダーのイエスマンだよね。でも、◇◇がいると、△△はちょと主張が控えめになるよね」みたいな人間関係観察の話で盛り上がっていらっしゃったと思います。
柴を多頭飼いする上でも、「たかが犬同士」と思わず、どんな犬関係になってるのかを日々観察しておきましょう。そして、その犬同士の関係を尊重することが大切です。
いかなる時も飼い主が絶対
先輩犬や後輩犬の間に上下意識が生まれることがあると、先ほど紹介しました。そして、「飼い主は犬同士の力関係を超越した存在であり、飼い主には絶対従わないといけない」ということをしっかりと覚えさせることが大切です。
ワンちゃんが好ましい行動をした場合はしっかりと褒めるのはもちろん、多頭飼いの場合、好ましくないことをした場合に「冷静に、正しく叱る」というしつけの原則を普段以上に徹底する必要があります。
ケガにつながりそうな大きなケンカが起こったり、周りの人がいるお散歩中にケンカが起こるなど、多頭飼いにはさまざまなトラブルがつきものです。そんな時、「飼い主のいうことは絶対」であると分かってもらえれば、トラブルへの対処も容易になります。
先住犬への愛情は特に欠かさない
多頭飼いの場合、後輩犬よりも先住犬の方が圧倒的にストレスが大きいです。後輩犬は「家に来た時から、他の犬がいるのが当たり前」と思っていますが、先輩犬にとっては、「ずっと続くと思っていた自由が制限された」という認識です。
先ほど、先輩と後輩で力関係が逆転することがあると説明しました。それでも、絶対的なリーダーたる飼い主は、出来る限り先輩犬を優先してあげるという姿勢を見せなければなりません。たとえ後輩犬の方がケンカが強かったとしても、どんな場合も「飼い主が絶対的なリーダー」という認識ができていれば、先輩犬が優先であるとはきっと理解してもらえるはずです。
おやつやごはんを食べさせてあげる順番や、散歩の前にリードや服を着せる順番など、日々のちょっとした瞬間に先輩犬に対する配慮を示してあげましょう。先輩犬と2人きりになれる時間を意識的に作って、ストレスをかけてる分たくさん愛情を注いであげるというのもいいアイデアかもしれません。
エサは順番に。皿はすぐ下げる
ドッグフードのCMなどで、1つの皿に2匹以上のワンちゃんがありついている構図をよく見かけます。多頭飼いをする上で、このようなエサの与え方はNGです。
基本的には、先輩犬からエサをあげるようにしましょう。ところが、先輩犬が老齢になって後輩犬が活発で力が強い場合は、犬社会の序列に基づいてエサの順番を決めるのがいい場合もあります。やはり、犬同士の関係性を日々観察するのは大切です。
おもちゃなど、物の奪い合いでケンカになることも
犬を多頭飼いすると、おもちゃ等に対して「相手の犬に取られたくない」という思いから、物に執着してしまう場合があります。おもちゃだけでなく、ワンちゃんの飼育に関係のない家の物にも執着してしまう場合があるので、できるだけおもちゃや家の物は整理整頓を心掛けて、奪い合いのケンカが起こらないように気を付けたいところです。
多頭飼いの相性:性別、年齢、柴と他犬種、柴と猫
性別の組合わせは、オス×オスは避けて
柴犬のオスとメスの性格を比較すると、オスの方がやんちゃで活発な子が多いです。そのため、オスの柴犬同士で多頭飼いすると、ケンカが荒々しくなることが多いです。
他方、メス同士を一緒に飼うのも何かと犬同士の衝突が増えるらしいですが、オス同士の組み合わせよりは断然に飼いやすいです。
一番関係が安定する性別の組み合わせは オス×メスがいいといわれています。「穏やかで面倒見のいいお姉ちゃん」と「ちょっとやんちゃだけどお姉ちゃんに懐く弟」という順序の方がうまくいきそうですね。異性同士で多頭飼いをするときは、避妊の対策もお忘れなく。発情期のときは部屋を離すことも必要です。
先輩犬と後輩犬の年齢差:7つ以上離れたらダメ
先輩柴と後輩柴の関係を長い目で考えると、年齢差が離れすぎるほど先輩柴のストレスが大きくなります。多頭飼いでの年齢差は一般的に「7つ以上離れたらダメ」と言われています。
ペットショップで仔犬同士がケージでじゃれ合っている様子はとてもかわいいですよね。犬の飼育やしつけを経験したことがあって、柴犬2匹を多頭飼いしたいという人は、誕生日が近い仔犬の柴を一緒に飼い始めるというのもアリ。「独立心が強くて、他者にやや気難しい」側面のある柴犬ですが、幼いころから一緒にいることで仲良しに育つ可能性は高いです。
柴犬は、柴犬同士が一番相性がいい
色々な犬種の中で、柴犬はやや多頭飼いのハードルが高いグループに入ります。性格や体格がかけ離れていると多頭飼いは難しくなるので、柴犬同士の多頭飼いが一番相性がいいです。
柴犬と他犬種の組み合わせでの多頭飼いを考える場合、柴犬が先住犬だとストレスケアが大変です。先輩犬が温厚で優しく、他の犬に対しての攻撃性が少ない子なら、仔犬の柴を後から迎えるという多頭飼いの始め方もいいと思います。
柴犬と猫の相性について
何匹かの柴犬と一緒に遊んだ経験から感じたのは、「柴は心を開いてくれると懐いてくれますが(強い忠誠心)、優しくされるのが当然だと思っている図々しい猫っぽさがある」という印象です(笑)
先住犬が柴犬のときはケアが大変ですが、それ以上に猫が先住の場合もストレスのケアが大変です。家の中を気ままに動き回りたい猫に対して、柴犬のテリトリーに入らないように教えるのも難しそうです。
SNSなどで柴犬と猫を一緒に飼っている動画を見かけて「かわいい!ずるい!」と思ってしまいますが、それらは「柴と猫が例外的にうまくいっている例」と思っておいた方がよさそうです。
どうしても柴と猫の多頭飼いをしたい場合は、温厚な柴犬を先に迎えて、やや後から社会化期の猫を迎えて環境に慣れさせるという手順がおすすめです。
多頭飼いの住環境(ケージ,トイレ)について
それぞれの犬に「自分だけの場所」を与える
柴×柴の多頭飼いなど、縄張り意識が強い柴犬の多頭飼いをするときは、それぞれに「自分だけの場所」を与えてあげましょう。そして、「他の犬専用の場所には入ってはいけない」というしつけをすることも大切です。
ワンちゃんのためのパーソナルなエリアを作るには、室内用のケージやクレート、あるいは寝床にできるクッションなどもおすすめです。住まいのスペースに余裕があるのなら、四方が囲われているケージを頭数分準備した方が、場所に関するルールをしつけやすいです。
トイレは頭数分準備するのが理想
柴犬はトイレ環境について厳しめな犬種なので、スペースの都合で物理的に可能なら、頭数分のトイレを設けるのが理想です。そして、パーソナルスペース同様に、互いに自分以外のトイレには立ち入らないよぅにしつけておきましょう。
もしトイレを頭数分作る余裕がないのなら、共用トイレケージを設けておきましょう。そして、トイレ環境に厳しい柴犬のために、他の犬が用を足したトイレシーツは即座に取り替えるようにしましょう。
賃貸(マンション・アパート)で多頭飼い、近所への騒音
多頭飼いすると吠える?
近所への配慮が必要なエリアに住んでいる方は、ブリーダーさんとよく相談しながら、2匹目のわんちゃんは吠え癖が少ない子を迎えたいところです。
多頭飼いのワンちゃんたちが吠えるかどうかは、先住犬が大きく左右します。先住犬が吠えずにおとなしくしていれば2匹目の子もそれに倣おうとしまいます。しかし、多頭飼いを始めて先住犬のストレスが増えると、吠えるようになってしまう場合もあります。やはり、多頭飼いをする上で先住犬へのケアと愛情は欠かせません。
ワンちゃんが走り回る部屋にカーペットは必須
多頭飼いをすると、ワンちゃんが走る時の床の音がより響くようになります。隣の部屋や階下の部屋のことを考えて、わんちゃんたちが動き回る部屋には防音のカーペットを敷きましょう。
「ペット可」≠「多頭飼いOK」
賃貸マンションやアパートでペットを飼いたい場合は、「ペット可」の条件で検索します。しかし、「ペット可」と書かれている物件は基本的に、「犬または猫1匹以内」という決まりになっているところが多いです。ペット可能な物件をそろえている「ペットホームウェブ」さんのサイトにはこのように書かれています。
多頭飼育ができるペット可物件は、「担当会社からひとこと」や「ペット」「備考」欄に「多頭飼育可」「多頭飼育相談」などと書かれています。※多頭飼育は「ペット相談」の物件ではほぼNGです。
多頭飼いする際に理想的な間取り
柴犬などを多頭飼いする際は、個別のケージやトイレを設置するスペースも考慮して、少なくとも1LDK以上の広さは欲しいところです。2LDK以上あれば家族のスペースにもゆとりが生まれます。
多頭飼育可能な物件の特徴
多頭飼育を想定している物件の家賃相場をみているとは、そのエリアの同じ間取りの平均くらいか、少し高いです。
不動産サイトで多頭飼育可能物件をいくつも見た印象だと、「多頭飼育可能なのに家賃が相場平均程度」という物件は、築年数が経っているものが多いです。築年数が経っていると防音機能はあまり期待できませんが、隣や上下の部屋の人も多頭飼いしている可能性が高いので、多少の騒がしさは「多頭飼い同士、お互い様」ということになると思います。
都市部でもペットを室内で飼うのが浸透している最近では、ペットとオーナー家族の共生を考えた「ペットオーナーズマンション」も増えてきてはいます。しかし、需要に対する供給戸数が圧倒的に少なく、なかなか手が届かないのが現状なようです。
柴の個性をよく知るブリーダーさんに相談すれば安心
お互いが仲良しな多頭飼いを実現するには、それぞれの個性を理解することが大切になります。将来的に多頭飼いをしたい希望が少しでもある場合は、一頭目を選ぶときからブリーダーさんと多頭飼いを見据えた相談をしておくと安心です。
柴犬の多頭飼いのパターンで一番オーソドックスな「柴×柴」の組み合わせを考える場合、同じ母親から生まれたきょうだいだと仲良しになることも多いといわれています。きょうだい柴の多頭飼いをする上でもやはり、ブリーダーさんとのつながりが大切になります。
仲良しな多頭飼いを実現するためには、それぞれの子を「わが子」と思って根気よく向き合ってあげないといけません。子育てするのもペットを育てるのもどちらも大変ですが、そのぶん、いろいろな瞬間に幸せを感じられますよね。
今お持ちのワンちゃんにも、これから迎えるワンちゃんにも、いっぱいの愛情を注いであげてください!!みなさまの多頭飼い柴ライフが、充実したものになることを願っています。