愛犬の困った行動の中に食糞があります。食糞とは、その名の通り糞(うんち)を
食べてしまう行動の事を言います。うんちを食べている姿を見ると、
どんなに可愛い愛犬でも衝撃を受けますよね。
「止めさせないと!」と思っても、なかなか止めてもらえなかったり、
何度も繰り返されると病気かな?と不安になるものです。
「うちの柴犬が食糞をしてしまう。」というお悩みは結構聞きますが、
柴犬が他の犬よりも食糞しやすいという事ではありません。
犬の食糞の理由と対策についてケースバイケースで紹介します。
目次
特に心配しなくていい食糞
食糞も理由を見ていくと「特に心配いらない食糞」というものがあります。
それは「好奇心」「匂いフェチ」「母性本能」の3つ。
これは「犬だから」というのが一番大きな理由です。
好奇心で食糞している
心配いらない食糞のひとつに、単なる好奇心というのがあります。
これは子犬に多い行為で、
糞がオモチャのようになっているもの。
小さな犬は好奇心の塊で、
色んな物の匂いを嗅ぎ、触れ、囓り、遊んで
「これは大丈夫なもの」「これは危険なもの」と学んでいきます。
成長の途中で、たまたま糞に興味が向いた、というだけ。
病気でも異常でもなんでもないので、
特別心配する必要はありません。
犬は匂いフェチ
ふたつ目の理由は「匂いフェチ」というもの。
犬は強い匂いが大好き!
ビーグル犬など、匂いを嗅ぐのが好きで
得意な犬は「いつまでもクンクン匂いを嗅いでいたい!」というほど。
糞は強い匂いがするので犬の興味を惹きやすいのが難点!
ベッタリ鼻を引っ付けてクンクン嗅いで、舐めて、
ずっと執着していたい!と犬に思わせてしまう困ったものです。
困ったものですが「匂いフェチなんだね」で済むものなので、
特別心配する必要はありません。
他に興味を惹くものがあれば自然と
そちらに興味が向き、食糞しなくなりますよ。
母犬の母性と野生の本能
3つ目の食糞の理由は母性です。
犬は愛玩動物として人に飼われる中で、
野生の本能もかなり薄れてきています。
しかし、完全になくなった訳ではなく、
ちょっとした拍子に本能が現れることがあります。
そのうちのひとつが食糞。
昔、母犬は外敵から子犬の存在を隠すために
子犬の糞を食べて外に残さないようにしていました。
このような、本能的な食糞も心配は要りません。
改善するとすれば「敵は居ないよ(ここは安心できる場所だよ)」と
覚えられるような静かで誰も邪魔しない専用スペースを作ってあげるなど、
生活環境を工夫してくださいね。
心配いらない食糞に対する対策
心配しなくていい3つの食糞を紹介しましたが、
これらの対策は「糞をできるだけ早く処理すること」です。
犬の興味が糞に向く前にサッと片付けてしまうのがポイント。
そのためにも、トイレの場所を決め、できるだけ早くから
トイレトレーニングを始めて確実にトイレで排便できるようにしましょう。
そうすれば、飼い主さんの片付け作業も迅速かつ楽にできますよね。
食糞の理由自体は心配いらないものでも、糞は衛生面で問題があります。
寄生虫や病原体が紛れ込んでいる危険もありますので、
できるだけ早く片付けてくださいね。
今すぐ生活習慣を治したい食糞
心配しなくていい食糞もありますが、
生活習慣を見直す必要がある食糞もあります。
次の4つのタイプの場合は、
生活リズムや飼い主さんの接し方を改善してあげてくださいね。
人目を惹きたい・飼い主の興味を惹きたい食糞
まず、食糞が遊びの一種になってしまっている場合です。
犬は「楽しい!」「面白い!」と感じた時の行動を繰り返す習性があります。
過去に食糞した時、飼い主さんの対応が
「面白い」「構ってもらえた!」「飼い主さんを振り返らせるのに成功した!」と
犬が感じるようなものだった場合、
愛犬は飼い主さんの反応を求めて食糞を繰り返します。
たまたま、食糞が犬にとって成功体験になってしまったケースですね。
こういう場合、愛犬はとにかく飼い主さんが大好き!
好きで堪らなくて、構って欲しくて飼い主さんを振り返らせようと一生懸命なのです。
ですから、対策としては
❷散歩やオモチャ遊びを通して
「飼い主は食糞しなくてもちゃんと相手をする」と愛犬に覚えてもらう
この2つを実践してください。
とにかく、しっかり遊ぶこと!
愛犬の「好き!」に行動で応えてあげてくださいね。
寂しい(ストレスが溜まっている)
次の食糞は、愛犬の寂しさとストレスが理由のもの。
飼い主さんが留守がちだったり、ずっと外に繋がれっぱなしで
誰にも相手をしてもらえなかったり、
散歩や遊びの機会が足りていない場合、
ストレス解消で食糞することがあります。
自分の時間を大切にする(ひとりにされても大丈夫)な犬もいますが、
多くの犬はいつも仲間と一緒に過ごしたいさみしがり屋。
家で飼われている犬の場合は、家族が仲間です。
仲間外れにされていたり、孤独を感じる状態が長く続くと、
人も辛くなったりストレスが溜まったりしますよね。
この場合は、スキンシップの時間を増やすようにしましょう。
今は飼い主さんのライフスタイルも多様化して、
独り暮らしで働いている方(昼間、家をよく空ける方)でも
犬を飼っていますよね。その場合は、一緒に居られる時間は
可能な限り愛犬と一緒に遊び、絆を深める時間を作ってください。
心の隙間を埋める作業を続ければ、食糞の頻度も減るはずです。
興味の先が糞(うんち)しかない
先に紹介した「寂しい」と関連していますが、
散歩の機会が少なかったり、オモチャで遊ぶ時間がなかったり、
一緒に時間を過ごす相手が居ないなど。
興味を示す先が自分の糞しかない状況の場合、食糞してしまいます。
便は強い匂いがしますし、自分の匂いがする安心できるもの。
何もなければ、うんちで遊んだり食べたりしまっても仕方がありません。
この場合も、とにかく愛犬の興味をうんち以外に向けるため、
スキンシップをはかったり、オモチャで遊んだり、
散歩に連れ出すなど。生活習慣を改善するようにしてください。
栄養不足
生活習慣の改善が必要な食糞4つ目は栄養不足です。
今は簡単に栄養バランスがとれたフードが手に入りますし、
おやつも豊富で食べ過ぎて肥満になるケースがほとんどです。
しかし稀に栄養不足に陥ることがあります。
その場合、体が不足分を補おうとして本能で糞を食べてしまいます。
極端なダイエットをしていたり、飼い主さんが十分な
量のフードを与えない(小さな犬が好きで食事を制限して成長させないようにする)、
昔ながらの残飯だけを与える食事などの場合は
栄養失調に陥り、食糞する可能性があります。
この場合は食事の内容を改善するのが解決策になります。
「どんなフードがいいのか分からない!」という場合は、
とりあえずパッケージに総合栄養食と書かれたフードを選んでください。
総合栄養食は、そのフードと水を与えていればOK
という犬のための完全なバランス食です。
1日に食べさせる量はパッケージに書かれていますから、参考にしてくださいね。
必ず体重の減り具合をチェックしながら、
適切な食事と運動の両方を実現し、
ゆっくり時間をかけてダイエットしてください。
獣医師やプロと相談しないといけない食糞
食糞の中には、これまで紹介したタイプとは違い、
獣医師による治療やドッグトレーナーなどと
相談しながら治していかなければならない食糞もあります。
この場合は治療に時間がかかる他、
飼い主さん自身の考え方・犬の飼い方も治さなければなりません。
重症の食糞を紹介します。
飼い主依存症(分離不安)からくる食糞
先ほど、犬は仲間(家族)と一緒にいるのが好きな動物と紹介しました。
しかし、ベッタリ一緒に居すぎたため、
依存症になって離れると極度の不安や恐怖心にかられてしまう
分離不安という状態に陥る犬がいます。
分離不安の犬は独りにされると、強い恐怖心や不安に襲われ、
それから逃れるために吠え続けたり、大暴れしたり、
自分の匂いがする糞を食べて安心しようとしたり、
自分の足などを舐め続けたりします。
分離不安になっている犬の食糞は、
独りで居ることが平気にならなければ治りません。
まず「飼い主の姿が見えなくても平気」というトレーニングから始め、
「ごく短い留守番」ができるように練習し、
「30分以上留守番しても吠えたりしない」という風に慣らしていきます。
他にも、飼い主さんの愛犬に対する接し方を変え、
人の社会で生活していくのに慣らしていく「社会化トレーニング」を
繰り返すようにします。このトレーニングは、
ドッグトレーナーなどのプロの手を借りるのがおすすめ。
どんなに大切な家族であっても、犬は犬。犬の本能を理解し、
できる限り満たしながら、人の社会で起こる現象に慣らしてあげる。
人と犬は違う生き物という節度ある接し方ができるようになれば、落ち着いてきますよ。
異常行動のひとつの食糞
極度に劣悪な環境で育てられていたり、
一切散歩に連れて行ってもらえなくてストレスが極限に達していたり、
虐待を受けていたり、異常な恐怖体験をしたような犬の場合、
異常行動のひとつとして食糞することがあります。
通常の家庭ではほとんどありませんが、稀に「ペットショップで購入するときに
『小型犬なので散歩不要です』と言われて散歩してなかった」
というような場合、異常行動の食糞をすることがあります。
小型犬に必要な運動量はわずか。チワワなど超小型犬は家の中を
自由に動き回っていれば散歩に出なくても運動量は足りている、
というのは間違いではありません。
しかし、散歩には「気分転換」「他の犬と交流する」
「匂いを嗅ぐ」「縄張りを見回る」「遊ぶ」といった色々な意味があります。
運動以外の意味が大きいもの。
こうした本能的な欲求を満たしたり、
好奇心を満たす機会がゼロの犬の場合、ストレスで食糞を始め、
癖になってしまって止められない(止めると強い不安に襲われる)異常な状態に陥ることがあります。
こうした異常行動は食糞以外にも、
同じ場所をグルグル回り続ける、
手足を血が出るまで(血が出ても)噛み続ける、
異常に強い攻撃性といった形で出ることがあります。
異常行動の食糞は、原因となっている
生活習慣(飼い主さんの生活パターン)や
生活環境を変えるところからスタートになります。
場合によっては獣医師に抗うつ剤を処方してもらい、
薬による心のケアをしながら治すことも。
犬が犬らしい生活を送れるような環境作りが解決策になります。
まとめ
食糞の理由は色々。犬が犬であることを認めるのが大切
食糞の理由は心配いらないものから、
薬が必要になるものまで様々です。
しかし、どの場合も「犬は犬であって、犬の特性を認めてあげること」が重要になります。
どんな飼い主さんでも愛犬に対する愛情は深いもの。
その深さと方向がちょっと違う方向へ行ってしまうと
食糞という行動で抗議してくると思ってください。
もし、食糞を繰り返すようなら
「なにか不満があるのかな?」「改善すべき生活習慣はなに?」と
考えてみてください。時には獣医師やドッグトレーナーなど、
プロの手を借りるのも有効です。
食糞が見られたら、飼い主さんと愛犬、
両者にとってストレスのない暮らしを手に入れる道を探ってみてくださいね。
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