日本犬は外飼いをするイメージが強いという方もいるでしょう。柴犬を家族に迎えるにあたって外飼いが可能ならという条件が付くご家庭も少なくありません。
ただここ最近の異常気象や寒暖差、愛犬の健康を考えた場合、昔よりもやや工夫や注意が必要な点もあります。
屋外、屋内いずれの場合でもお互いが快適に幸せに暮らせるように基本的な事項をご説明させていただきます。
柴犬は外飼いしてもいいの?
柴犬は元来、
・日本の厳しい冬の寒さにも耐えうる体
・四季折々の気候の変化に対応出来る被毛の構造
・外で暮らすことでのメンタルの強さ
を兼ね備えた犬種です。外で生活をさせることは特別問題ではありません。
ただ今や柴犬も家族の一員であり、ペットです。一昔前のように番犬という役割を担う事はないでしょう。
そのため外飼いをするうえでは愛犬の健康、近隣への騒音に配慮する必要があります。
〇健康面は
・毎年フィラリア予防薬を飲ませる
・ノミダニ予防を徹底する
・混合ワクチンを摂取する
・食欲の増減を確認する
・生後半年前後に避妊、去勢手術を行う
・マイクロチップ、迷子札を装填する
という点を心掛けておきましょう。外飼いでは何より伝染病感染の危険が高くなります。予防策がある病気に関しては毎年忘れずに対策を講じておきましょう。
避妊、去勢は望まない妊娠や発情期の脱走、喧嘩を防ぐうえで効果的な対策です。出来る限り早期に処置を受けましょう。
外飼いの場合、交通騒音、雷、花火、地震、火事などの突発的な出来事で犬がパニックを起こすことがあります。万が一の場合でも必ず発見し自宅に戻ることが出来るようにマイクロチップの装填が済まされていると安心です。
外飼いの場合、係留されたままでの生活は運動不足やストレスの増大につながります。日々の運動は朝夕の散歩はもちろんのこと、休日にはドッグランへも出かけてあげるとよいでしょう。
〇しつけの面は
本能的に警戒心が強く、家族と他人とを明確に区別する傾向が柴犬には強くあります。外飼いをすることで、この習性はますます強くなるでしょう。
生後半年~1年ほどの期間に徐々に騒音や通行人、車などへの無駄吠えが目立つようになります。中には遠吠えに似た鳴き声を上げる場合もあるでしょう。なかなか鳴き声の都度、飼い主が駆けつけ、しつけることは難しいことですが、近隣の騒音問題も考え早急に対処をしましょう。
夜間だけは玄関先やケージに入れ就寝させるという方法も効果的です。
また日ごろから積極的に家族以外の人と触れあう機会を作るよう心掛けると、余計な警戒心が解消され、無駄吠え改善の効果がみられます。
〇生活環境面は
外飼いの最大の課題は暑さ、寒さをどう乗り切るかです。
夏の暑さは人間でさえ熱中症を起こす危険が日常化しています。犬の生活環境は
・直射日光を遮ることの出来る場所を作る(ヨシズやベランダカーテンなど)
・木製の小屋を設置し日陰を作る
・十分な量の飲み水を用意しておく
・通気性の良い場所で生活をさせる
・地面を掘ることを認める
という点に取り組んであげましょう。
朝と昼とでは太陽が当たる向きが変ります。この点をしっかりと考え、終日日陰になる場所があるよう環境を整えてあげましょう。
犬小屋(ハウス)設置する場合は木製製品を購入しましょう。プラスチック製は軽量で丸洗いが出来ると人気ですが、デザインによっては通気性が悪い場合があります。丈夫なステンレス製は直射日光が当たることで、日中は高温になり日陰としては活用できません。
また炎天下では犬は自分で地面を掘り、冷たい土のお腹をつけ横たわることで、体温の上昇を防ぐことがあります。単なるいたずらと叱らずに暑さ対策であることを理解してあげましょう。
アスファルト舗装された地面は、犬の体が汚れないというメリットはあるものの、日中は想像以上の高温になります。係留場所や犬小屋設置場所は念入りに考え決めてあげましょう。
柴犬の室内飼いの基本
柴犬と室内で生活するうえで心がけておきたい事は
・春と秋の抜け毛が多いこと
・吠えると意外に声が大きいこと
・臆病で人見知りな性格であること
です。元来番犬としての活躍を期待されたいたこともあり、いざという時は大声で鳴き、家族を守ろうと必死になってしまうことがあります。
〇健康面は
基本的に体は比較的丈夫な犬種です。しかし近年アレルギー発症の増加が注目される事が多々あります。アレルギーの原因は大抵が食物ですが、中には金属に反応してしまうケースもあります。
・かゆみ
・脱毛
・皮膚の変質
などが変化があった時は早急に動物病院を受診しましょう。
室内で生活をする場合、多頭飼いでない場合も早期の避妊、去勢手術を前向きに考えましょう。
柴犬のオスは日ごろはとても穏やかで落ち着いた性格ですが、時に激しい威嚇や喧嘩、脱走とすることがあります。大人でも一人で抑えるのは難しいと感じるほどです。周囲と良好で安全に交流をするためにも去勢手術をお勧めします。
メスの場合、発情期は年に2回、春と秋に1、2週間訪れます。目立った変化はありませんがこの期間トリミングやペットホテル、ドッグランなどの利用は制限がかかります。また他犬を刺激しないためにも急を要さない動物病院の受診は控えましょう。タイミングを予測できず、急な予定変更が必要になることを考えると早期の処置が安心でしょう。また避妊手術を済ませておくことで、将来の子宮関連疾病を予防出来る点も重要なポイントです。
〇しつけ面は
生後一年未満は、積極的に屋外へ連れ出したり、家族以外と触れ合う機会を持たせたり、他犬とのじゃれ合い遊びも多いに経験させましょう。いかに多くの社会化経験を積むかで、性格形成に大きく影響をします。
柴犬は元来警戒心が強く、神経質な面があります。社会化経験を積ませることで、このような面を出来る限り軽減してあげましょう。
子犬の時点で苦手と感じる音、人、状況がある場合は決して無理強いはしないものの、徐々に慣れることで無駄吠えにつながらないよう練習を重ねてあげましょう。
〇生活環境面は
警戒心が強い柴犬にとって自分だけのプライベートスペースが確保されていることはとても重要なことです。子犬のうちからケージやキャリーケースを利用しましょう。
このプライベートスペースは単なる寝床という意味だけではないので、ベッドやマットを置くことでは意味がありません。
プライベートスペースは柴犬が緊張や不安を感じた時に逃げ込み、身を隠し、安心出来るためのエリアでもあります。そのため周囲からの目線を遮ることの出来る構造のケージがおすすめです。
ケージの周辺をタオルなどで囲ってあげてもよいでしょう。
留守番をさせる時間が長い場合はケージやサークルを活用し、短時間や夜間就寝時だけという場合はハード型キャリーケースやバリケンでも対応可能です。
また来客中もプライベートスペースで待機するよう教えると、愛犬も安心して過ごすことが出来ます。
警戒心が強い柴犬にとって飼い主が不在の時間や見知らぬ相手が訪問をした際に、室内で自由行動をさせられるという事は不安や緊張を増大させることになります。中には責任感から激しく吠え、相手を追い払おうとすることもあるでしょう。
プライベートスペースに入れることで、柴犬は飼い主から番犬の役目をしなくてもいい、する必要がないとという指示を受けたと理解できます。
ケージやキャリーの利用は決して窮屈でかわいそうなことではなく、お互いの意思を明確に伝えあい、相手を安心させることの出来る有効な方法です。
室内で生活をする場合、室温管理は人間の体感温度が基準になります。しかし柴犬は被毛の密集度が高いので、人間にとっては快適な温度でも暑いと感じることもあります。日々の様子を気にかけつつ、室温や居場所を工夫してあげましょう。
夏は終日エアコンを稼働させ、熱中症対策を万全にしてあげましょう。夏は夜間でも気温が下がらない日が増えています。夜間もエアコンを利用し、安全に過ごすことが出来るよう注意しましょう。
外飼いと室内飼いの違い
30年ほど前まで柴犬など中型犬の平均寿命は10年ほどと言われていました。しかしここ最近のデータでは15年が平均値と言われています。
このような大きな変化が起きた背景には、生活環境の変化が大きく関係していると言われています。
それまでの外飼い生活から屋内生活へと変化したことで、自然の厳しい気候の変化に耐える必要がなくなったためです。
その上、日々の食欲の変化、便の状態、表情など些細な変化にまで家族の目が行き届き、不調や病気の早期発見にもつながっています。
もちろん外飼いであれば気が付くことの無かった不調や病気にまで目が行くようになったことで、中には昔に比べ柴犬が軟弱化したという意見もあります。
この意見は決して根拠のあるものではなく、外飼いであれば不調や病気が見過ごされたいたことも関係しているのでしょう。
もし外飼いと室内飼いを悩まれているという方は下記をご参考にお考えください。
〇性格
外飼いをされている方が感じる柴犬の性格は
・落ち着いている
・無暗に騒がない
・飼い主の事が大好き(他人には無関心、愛想がない)
・神経質
と感じるでしょう。
室内飼いをされている方は
・甘えん坊
・内弁慶
・頑固
・真面目
・警戒心が強い
と感じるものです。基本的な性格は日本犬ならではの落ち着きがあり、飼い主に忠実で、常にまっすぐに飼い主を見つめているといえるでしょう。
外飼いの場合、たとえ飼い主と遊んでいる間でも心のどこかに緊張感があり、いつでも番犬としての役目を果たせるようにと心掛けています。無条件に甘えたり、無防備な姿を見せることもごく稀です。
しかし室内で生活をしている場合、室内は完全な安全地帯だと認識しています。家族以外の侵入がないこと、危険がない事を理解しているので、無防備に甘えたり、時は仰向けのままで眠ることもあるほどです。また室内で共に暮らすと家族それぞれの性格や行動を常に観察しているので、お互いの距離も近くなり、より身近な存在だと感じることも多いでしょう。
〇外見
外飼いの柴犬に比べ室内飼いの柴犬の方が体のラインが細い、華奢、小柄という印象を持たれる事があります。これは生活環境によって筋肉の発達に差異があるからでしょう。
また柴犬の体形には意外に個体差が大きいことも特徴です。
外飼いの柴犬は冬になると寒さ対策の為に二層の被毛のうち、綿毛状の下毛がびっしりと生え揃います。この時期、太った?体が大きくなった?と感じることもあるでしょう。
この下毛は冷たい風や雪から体を守ってくれる効果があります。室内飼いの場合、冬でもエアコンや床暖房が完備されているので、中には夏と大差ないほどの被毛の量で終わることもあります。
この点は生活環境にそれぞれが順応している証です。
ただしあまりにも小柄な柴犬、小型犬並みに小さな子犬は発育不良や先天性疾患を持っている可能性もあるので、小さい事がかわいい事、飼いやすい事と勘違いしないように注意しましょう。
〇寿命
一般的に外飼いよりも室内飼いの方が平均寿命が長くなる傾向にあります。これは自然の厳しい環境に影響されないこと、飼い主が些細な変化でも早期に発見することが出来ることが関係しています。
外で生活をする場合は特にフィラリア予防は毎年徹底し、予防出来る病気は万全に対処しておきましょう。
また6歳を超えシニア期を迎えてからは、真夏、真冬の寒さが体に与えるダメージも増大します。夜間や悪天候、炎天下の際は軒下、玄関先、室内での生活に切り替えることも考えてあげましょう。
実は日本で最も長生きをした犬は柴犬を親に持つ雑種犬です。20歳を超えても屋外で生活をしていたので、必ずしも外飼いが短命ということではありません。
〇健康
柴犬は実は皮膚がとてもデリケートな体質です。特に高齢になってからは皮膚の
・変質
・乾燥
・痒み
・脱毛
が目立つようになります。
ただ被毛の密度が高い上に、二層構造な事からなかなか早期発見が難しいのが実情です。特に外飼いの場合は早期発見が困難でしょう。
外飼いでも室内飼いでも日ごろからこまめにブラッシングをしてあげましょう。余分な抜け毛、汚れを取り除き、皮膚や被毛の通気性を高めることはとても意味があります。
また病気の早期発見にもつながります。コミュニケーションを図るつもりでブラッシングを続けてあげましょう。
まとめ
外で飼う?室内で飼う?なかなか難しい問題でしょう。どちらを選択する場合でも、環境に応じた健康管理、しつけ、環境の整備を心がけ、快適で幸せに生活できるよう心掛けてあげましょう。
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