犬の花粉症はくしゃみでなく皮膚に出る。対策グッズ,治療も解説

犬の花粉症の原因、人間との違い

毎年春先、人間が花粉症に苦しむように、犬にも花粉によるアレルギー症状が現れる場合があります。

ブタクサやスギ、ヒノキにヨモギなど、犬の花粉症を引き起こすアレルゲンの種類は50種類にも上るといわれています。人間も犬も、肥満細胞の表面に存在するIgE抗体が粘膜に付着したアレルゲン(この場合は花粉)に反応することで花粉症のアレルギー症状が引き起こされます。

人間の花粉症は鼻水やくしゃみなど、鼻の粘膜が原因で引き起こされるものが多いです。一方で犬の花粉症は、皮膚のアレルギー症状として現れることが大半です。

犬の花粉症の症状

犬のくしゃみは花粉以外の要因の可能性

春先に愛犬のくしゃみや鼻水が気になったきっかけに、犬の花粉症を疑う飼い主さんは多いようです。

犬の鼻の粘膜にはアレルギー反応を起こす肥満細胞が人間と比べて少ないので、人間の花粉症のような鼻水やくしゃみといった症状はあまりひどくはなりません。それでも、花粉症でくしゃみを連発するというワンちゃんも一部にはいるようです。

犬の鼻は敏感なので、刺激臭からくしゃみが止まらなくなることもあります。そのほかに犬のくしゃみ・鼻水から考えられる病気には、風邪、ハウスダスト、鼻炎、副鼻腔炎などがあります。特に子犬がくしゃみを頻発する場合は、「ケンネルコフ」という重大な病気も考えられます。

アレルギー性皮膚炎

犬の花粉症の症状の多くはくしゃみ・鼻水ではなく、アレルギー性の皮膚炎として現れます。体の各部分がかゆくなるのが、犬の花粉症の特徴です。

犬が掻きむしりやすい部分には、顔(特に目や耳もと)、おなか、4本足の付け根や関節部分です。同じ部分を頻繁に掻きむしってしまうと、毛が抜けたり、皮膚に赤みがかったり、湿疹や膿などのトラブルを起こします

「体の一部分をよく触る」「壁や床に体をすりすりする」というような仕草が目立ってきたら、花粉症による皮膚炎でかゆみを起こしている場合があります。かゆみによるストレスから、普段大人しいワンちゃんが攻撃的で怒りっぽくなる場合もあります。

外耳炎

花粉症のかゆみから犬が耳を過度に掻きむしると、外耳炎を引き起こします。犬の耳を見たときに発疹ができていたら、外耳炎を疑ってください。

初期の外耳炎では、耳元のニオイがいつもと変わります。頭を振ったり、耳をこすりつけて掻いているしぐさにも要注意です。このような症状を放っておくと、出血で耳道がふさがって手術が必要になります。

目の充血や抜け毛

犬の花粉症によるかゆみは、目の粘膜やまわりの皮膚にも現れます。目をこすることによる目の充血の症状や、目の周りの毛が抜けて皮膚が赤くなることもあります。

花粉症の犬が気を付けるべき食べ物

アレルギー抗体には、アレルゲンと似た分子構造を持つ物質にも反応してしまう場合があります。(これを、交差反応といいます)

花粉症を持つ犬の場合、野菜や果物に対してもアレルギー反応や下痢を起こしてしまう場合があります。犬の花粉症が疑われる場合、果物なども含むひと通りのアレルギー検査をしておくのがおすすめです。

犬の花粉症への対策

花粉症によるアレルギーは体質の問題なので、日々の生活から向き合っていく必要があります。アレルギーそのものを治すのは難しいですが、日々の対策次第で症状を軽減することができます。

多くの場合、散歩で外を歩いている時に吸い込んだり触れたりすることになります。そのため、

  1. 散歩中に触れる花粉の量を減らすこと、
  2. 外で触れた花粉を家の中に持ち込まないこと

以上二点が、犬の花粉症対策のポイントになります。具体的な対策方法を見ていきましょう。

花粉が多い昼前と夕方の散歩を避ける

花粉が多く飛散するのは、昼前(10時から12時ごろ)と夕方(日没前後、春なら18時前後)の時間帯。犬の皮膚に触れる花粉の量を減らすためにも、花粉シーズン中、これらの時間帯の散歩は避けるのが無難です。

晴れた日は、昼前に気温が大きく上昇し、日没前後に気温が大きく下がります。気温が大きく変化するこれらの時間帯は、地表と上空の気温差が大きくなって空気の対流が起こり、花粉が飛散してしまうのです。

花粉の飛散量は前日の天候や湿度によっても変わるので、お散歩前には欠かさず天気予報や花粉情報をチェックしておきたいところです。犬のためにも、花粉症な人のためにも。

ブタクサや草むらを避けたコースを選ぶ

ブタクサとは、上の写真にあるような黄色くて背の高い草です。見ただけでくしゃみが出そうです。

また、草むらによく生えているオオバコも、犬の花粉症を引き起こしやすい植物です。花粉症で皮膚が敏感な時期は、できるだけ草むらの散歩は避け、犬の皮膚が植物に触れてかぶれてしまうのをふせいであげたいところです。

花粉を落とすためのブラッシングについて

「散歩後、花粉を落とすにはブラッシングが効果的」と書いてあるサイトもありますが、あまりおすすめしません。

「ミストで花粉吸着+ブラッシング」で花粉を落とす方法も紹介されていますが、使用したブラシには、ワンちゃんのアレルゲンである花粉がこんもり付着しています。ブラシについた花粉を毎回お手入れするのも大変です。

ブラッシングには血行促進効果があります。ところが、血行がよくなると皮膚のかゆみが増してしまいます。花粉症での皮膚のかゆみに悩んでいるワンちゃんには、あまりうれしくないことです。

散歩後は使い捨てシートで花粉を落とす

おすすめは、散歩後に玄関に入る前、使い捨てシートでワンちゃんの体をひと通り拭いてあげる方法です。

シートは使い捨てなので、ブラシのようにお手入れする必要はなく、一度使ってそのまま捨てられるのがメリットです。

花粉を落とすのにおすすめの使い捨てシートは、クリーンワンの花粉ガードウェットティッシュ(80枚× 3パック入り)です。ノンアルコールなので、皮膚がデリケートな時期も低刺激で安心して使えますし、消臭成分やヘアコンディショニング成分も含んでいます。

服を着てお散歩する

お散歩の際にワンちゃん に服を着せることも、花粉に触れる量を減らす方法としては効果的です。服によって花粉の付着から体が守られるので、散歩から帰った際にウエットティッシュで花粉を落とす範囲を顔や足の露出している部分だけに減らすことができます。

犬が花粉症を発症する時期。秋にも注意

犬の花粉症を引き起こす植物は50種類以上あるといわれており、冬以外の季節には何かしらの植物の花粉が飛散していることがほとんどです。

人間同様、スギやヒノキ由来の花粉症を持つ犬は、春に症状を発症します。

また、犬の花粉症にはブタクサ由来のものも多く、ブタクサ花粉が多く飛散する夏の終わりから秋(8月から10月)にかけての時期もアレルギー症状が出やすいです。

花粉の季節や症状などの人間に起こる花粉症の知識は、犬の花粉症にそのまま当てはまるわけではありません。

花粉によるアレルギー症状を起こしやすい犬種

同じ犬でも、花粉症を起こしやすい犬種とそうでない犬種が存在します。

花粉症によるアレルギー症状を起こしやすい主な犬種は、次の通りです。

  • 柴犬
  • プードル
  • フレンチブルドッグ
  • マルチーズ
  • レトリーバー
  • シーズー

犬種によって花粉症のなりやすさに差があるのは、犬種ごとの皮膚の厚さやバリア機能の違い、アレルギー抗体の生じやすさに関する遺伝的体質のためであるといわれています。

犬の花粉対策グッズの効果ついて

花粉防止スプレーは効果薄

お出かけ前に犬にスプレーすることで、花粉の付着や静電気の発生を防ぐことのできる商品もあります。けれども、犬の体毛の量を考えると、いくら花粉防止スプレーを使っても花粉の吸着を完全には防げません。それに、スプレーで防ぎきれなかった花粉を散歩終わりに落としてあげる手間もかかります。

スプレーなどで散歩前にあらかじめ花粉が犬についてしまうのを防ぐより、潔く散歩から家に入る前にしっかりと花粉を落とすことを心掛けた方が手間がないと思います。

犬用のマスクも疑問

犬の花粉症は人間と異なり、くしゃみや鼻水ではなく皮膚のアレルギー症状がメインであると説明しました。そのため、花粉が鼻の粘膜に付着することを防ぐ犬用のマスクは、犬の花粉症の症状をふせぐ上ではあまり効果がないように思われます。

そのうえ、皮膚での体温調整機能が人間より弱い犬は、口を開けて舌を出して呼吸することで体温調節をします。犬用マスクをしてしまうことで、犬本来の体温調整の邪魔をしてしまうことになります。

ファッションとして犬用マスクをつけてあげたいなら、ご自由にどうぞ。

花粉防止の機能性ドッグウェア

体毛でおおわれている犬は体の表面積が大きく、短時間の散歩でも多くの花粉を吸着してしまいます。

一般的な犬の服はファッションの用途で作られており、体を覆う面積が小さいです。花粉防止ウェアは普通の服よりもカバーしてくれる範囲が広く、花粉にたいして露出してしまう面積を少なくすることができます。

ALPHAICON Online Storeでは、伸縮性があって動きやすく、肌に優しく通気性に優れた素材を使用した「アレルギードッグウエア」が販売されています。足首までカバーできる長さがあり、フードタイプで首や耳まわりもカバーすることができます。

小型犬から大型犬までのサイズのラインナップがあり、犬種ごとのサイズ表も記載されています。

犬の花粉症・アレルギーの治療について

軽度の皮膚炎ならステロイド塗り薬

花粉症シーズンに、部分的で軽度の皮膚炎が起こった場合は、動物病院に行くとステロイド入りの塗り薬が処方されることが多いようです。

ステロイド薬は比較的安価に処方されますが、あくまで皮膚のかゆみや炎症の症状を抑える効果しかありません。

花粉症の季節要因による一時的な皮膚炎なら、最小限のステロイド薬を利用してもさほど影響は大きくありません。ところが、ステロイド薬は副腎皮質ホルモンに働きかける作用があり、耐性も強く副作用も大きいです。

花粉症によって定期的に起こる皮膚炎やアトピー性の皮膚炎に慢性的に悩まされている場合は、犬のアレルギーに関する詳しい検査を受けた上で、アレルギーの根本的な原因に対する治療も検討する必要があります。

犬のアレルギーの検査の費用

犬のアレルギー検査の費用は、2万円から3万円が目安です。(※検査方法、動物病院によって異なる場合があります)

血液検査を行い、ダニやハウスダスト、花粉や食物アレルギーの有無を調べていく方法が主です。

減感作療法(脱感作療法)でアレルギーを克服

検査によってアレルギーの原因が特定できたら、減感作療法(脱感作療法)というレルギーを根本から克服する治療法を選ぶこともできます。

減感作療法は、アレルゲン物質を定期的に体内に投与することで、体をアレルギー物質に慣れさせていく治療法です。人間の場合も、花粉成分を少しずつ投与しながらアレルゲンに慣れて花粉症を克服する「舌下免疫療法」という似た治療法があります。

減感作療法のメリットとデメリット

犬のアトピー性皮膚炎の減感作療法に用いられる治療キットを製造している ZENOAQ(ゼノアック)社のサイトには、減感作療法のメリットとデメリットについて以下のように書かれています。

減感作療法のメリット

  • 皮膚の赤みやかゆみが治ることを期待できる
  • かゆみ止めなどのお薬の量を減らせる
  • 減感作療法終了後も皮膚の赤みやかゆみの改善が続く可能性がある

減感作療法のデメリット

  • 頻繁に病院に通う必要がある
  • 注射による痛みを感じることがある
  • まれにアレルギー反応などが起こることがある

減感作療法の費用、通院の頻度の目安

東京都目黒区で減感作療法を行っている学芸大学ペットクリニックの場合、犬へのアレルゲン注射1回当たりの費用は6,000円(診察費、検査費は含まない)、合計6回の治療を行うことになっています。

治療の最初のほうは1週間に1度の通院、経過が順調だと1か月に1度の通院になります。

アレルギー体質改善のフード

近年、腸内環境改善がアレルギーの緩和につながることが研究で分かってきました。ドッグフードや犬用サプリなどで、乳酸菌やオリゴ糖を意識的に摂取して腸内環境の改善に取り組みたいところです。

また、植物由来の不飽和脂肪酸の摂取もアレルギー性皮膚炎を改善につながるといわれています。「ω(オメガ)三脂肪酸」には皮膚の炎症を軽減する効果があり、「γ(ガンマ)リノレン酸」には乾燥肌を改善し、アトピー性皮膚炎の悪化を防ぐ効果があると報告されています。

アレルギー体質を食生活で改善させたいという人は、腸内細菌や植物性の不飽和脂肪酸の摂取を意識しながら、ドッグフードやサプリを選んでくださいね。

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